若年性アルツハイマー病とBPSD

根拠となるデータが提示されないまま、伝統的に若年性アルツハイマー病は進行が早いと言われ続けてきました。確かに極少数ですが家族性AD(APP、PS-I、PS-II遺伝子)のなかで、特にPS-I遺伝子を有する方は急速に悪化するといわれています。しかし一般的に若年性だから高齢者より進行が早いということはありません。一人ひとりに適したな医療とケアがなされているかが進行に大きく影響します。また栄養状態も進行に大きく影響するようです。
若年発症例では側頭頭頂葉移行部における萎縮が有意に強く、海馬の萎縮は弱いとされています。一般に若年の発症例では脳の萎縮はびまん性かつ高度であるのに対して、高齢発症例では側頭葉内側部に限局しがちだといわれています。老人班と神経原繊維変化の出現量に注目すると、若年の前頭葉や頭頂葉ではこれらが生理的上限の10倍もみられます。ところが、生理的にも出現しやすい側頭葉では2〜3倍に程度にとどまっています。
若年性は脳の萎縮がびまん性だからといって皆さんが同じような順序で、それぞれの部位が萎縮するわけでもないし、同程度に萎縮するわけでもありません。損傷を受ける部位や程度によって現れる症状も一人ひとり違います。
若年認知症に多いBPSDは、徘徊、agitation、易刺激性、アパシー、抑うつです。
●アパシー(無為、無関心)
趣味や社会活動などに対する興味の喪失、意欲や関心の低下、自発性の低下。
アパシーは必ずしも身体活動低下を示すわけではなく、徘徊や暴力、興奮などを示す患者でもアパシーを伴うことはある。

●agitation
興奮、暴言、暴力、拒絶、介護への抵抗。
女性よりも男性に多くみられる。

●易刺激性
些細なことで不機嫌になる、急に怒る、気難しく短気である。
●抑うつ
様々な障害などによる生活能力の低下を自覚したり、周囲の人に指摘されたりすることによるストレスが発症に影響している場合もある。
※若年発症アルツハイマー病/朝田 隆(老年精神医学雑誌2009より引用)
※認知症の基礎疾患ごとのBPSDの特徴/長濱 康弘(Cognition and Dementia2010より引用)

■アルツハイマー病のBPSDの頻度で圧倒的に多いのは徘徊で、約5割の患者にみられます。
●徘徊の原因
1 認知の障害による行動(アルツハイマー病に多い)
見当識障害のため、状況を正しく認識できず、当惑したり、混乱しているためにおこるもの。
2 欲求による行動(認知症一般)
家族や介護者、食物、トイレなどを求めて、彷徨するもの。認知症一般にみられる。
3 衝動的な行動(ピック病などに多い)
不安や焦燥、衝動に駆り立てられ、介護者の制止も聞かず、取り憑かれたように歩くもの。
4 常同的な行動(ピック病などに多い)
目的もなく、同じ場所繰り返し歩き続けるもの。ピック病などに多い。
5 無目的な行動(認知症一般、重度の患者に多い)
暇を持て余すように、目的もなくフラフラと歩くもの。
6 精神症状(幻覚・妄想)に基づく行動(薬物治療が有効)
幻の声に誘われて、その通りに行動するもの。「子供が外で呼んでいる」とか「知人がお茶に呼んでいる」などと言い、徘徊する。
  ー若年認知症の臨床/宮永和夫著よりー
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