アルツハイマー病研究最前線
アルツハイマー病の根治に向け、治験薬の開発が進む。
数多くの抗アミロイドβ抗体が開発されるものの、臨床試験では効果が確認されない、というケースが続いています。抗体治療が認知機能の回復に効果をあらわさない原因の一つは、抗体がタンパク質であるためではないか、と考えられています。脳の血管には「血液脳関門」とよばれる特殊な”壁”があり、血液中から脳に必須な物質だけが取り込まれ、他の物質は排除されるというしくみをもっています。そして、タンパク質である抗体は、血液脳関門をほとんど通過できず、そのため薬効を示さないのではないか、というのです。
そこで、抗体治療とはことなるアプローチによる創薬研究も行われています。たとえば、脳内のアミロイドβ濃度を下げるため、アミロイドβ前駆体タンパク質(APP)からアミロイドβを切り出すはたらきをもつ「βセクレターゼ」を阻害するという方法が考えられています。
◾️さまざまなタンパク質をターゲットとした創薬研究
アルツハイマー病の根本治療に向けて、「アミロイドβの蓄積を防ぐ」「タウの凝集を防ぐ」「炎症反応を抑える」など、さまざまな方向からアルツハイマー病によるニューロン死を防ごうと試みられています。
●ミクログリア機能調整薬
ミクログリアの細胞膜に存在する「TREM2」というタンパク質を刺激すると、アミロイドβを”食べる”能力が活性化される一方で、炎症をひきおこすサイトカインの合成は抑えられることが判明しました。
●βセクレターゼ阻害薬
APPを切断し、アミロイドβをつくりだす酵素であるβセクレターゼのはたらきを阻害することで、アミロイドβがつくられる量を減らすことができると考えられています。
●リン酸化酵素阻害薬
タウの凝集は、タウが「GSK-3β」とよばれるリン酸化酵素などによって過剰にリン酸化されることでひきおこされる可能性が示されています。そのため、このリン酸化酵素のはたらきをおさえることで、タウの凝集を防ぐことができるのではないかと考えられています。
●タウ凝集阻害薬
微小管から離れたタウは凝集し、ニューロン内に蓄積していきます。この凝集を防ぐことで、ニューロンの細胞死を防げるのではないかと考えられています。
●ネプリライシン刺激薬
ネプリライシンはシナプスの細胞膜に存在するタンパク質で、アミロイドβを分解するはたらきをもちます。そのため、このタンパク質を刺激することで、アミロイドβの分解を促進することができると考えられています。
●ソマトスタチン受容体刺激薬
ソマトスタチンは、主に視床下部から分泌されるホルモンです。ソマトスタチンが受容体に結合することで、ネプリライシンのはたらきが強まることから、この受容体を刺激することで、脳内のアミロイドβ濃度を低下させられると考えられています。
※「Newton 2017.3 アルツハイマー病研究最前線」より抜粋引用
数多くの抗アミロイドβ抗体が開発されるものの、臨床試験では効果が確認されない、というケースが続いています。抗体治療が認知機能の回復に効果をあらわさない原因の一つは、抗体がタンパク質であるためではないか、と考えられています。脳の血管には「血液脳関門」とよばれる特殊な”壁”があり、血液中から脳に必須な物質だけが取り込まれ、他の物質は排除されるというしくみをもっています。そして、タンパク質である抗体は、血液脳関門をほとんど通過できず、そのため薬効を示さないのではないか、というのです。
そこで、抗体治療とはことなるアプローチによる創薬研究も行われています。たとえば、脳内のアミロイドβ濃度を下げるため、アミロイドβ前駆体タンパク質(APP)からアミロイドβを切り出すはたらきをもつ「βセクレターゼ」を阻害するという方法が考えられています。
◾️さまざまなタンパク質をターゲットとした創薬研究
アルツハイマー病の根本治療に向けて、「アミロイドβの蓄積を防ぐ」「タウの凝集を防ぐ」「炎症反応を抑える」など、さまざまな方向からアルツハイマー病によるニューロン死を防ごうと試みられています。
●ミクログリア機能調整薬
ミクログリアの細胞膜に存在する「TREM2」というタンパク質を刺激すると、アミロイドβを”食べる”能力が活性化される一方で、炎症をひきおこすサイトカインの合成は抑えられることが判明しました。
●βセクレターゼ阻害薬
APPを切断し、アミロイドβをつくりだす酵素であるβセクレターゼのはたらきを阻害することで、アミロイドβがつくられる量を減らすことができると考えられています。
●リン酸化酵素阻害薬
タウの凝集は、タウが「GSK-3β」とよばれるリン酸化酵素などによって過剰にリン酸化されることでひきおこされる可能性が示されています。そのため、このリン酸化酵素のはたらきをおさえることで、タウの凝集を防ぐことができるのではないかと考えられています。
●タウ凝集阻害薬
微小管から離れたタウは凝集し、ニューロン内に蓄積していきます。この凝集を防ぐことで、ニューロンの細胞死を防げるのではないかと考えられています。
●ネプリライシン刺激薬
ネプリライシンはシナプスの細胞膜に存在するタンパク質で、アミロイドβを分解するはたらきをもちます。そのため、このタンパク質を刺激することで、アミロイドβの分解を促進することができると考えられています。
●ソマトスタチン受容体刺激薬
ソマトスタチンは、主に視床下部から分泌されるホルモンです。ソマトスタチンが受容体に結合することで、ネプリライシンのはたらきが強まることから、この受容体を刺激することで、脳内のアミロイドβ濃度を低下させられると考えられています。
※「Newton 2017.3 アルツハイマー病研究最前線」より抜粋引用
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