アルツハイマー病の診断基準

アルツハイマー病では、その病状の進行に伴って、特徴的な記憶障害や視空間認知・構成の障害、見当識障害、言語障害が出現する。妄想、抑うつ、徘徊、無為・無関心などの精神症状や行動の障害もみられる。診断基準にはDSM-ⅣやNINCDS-ADRDAなどがあるが、除外診断の側面が大きく、積極的な診断基準の作成が望まれる。
(新しい診断と治療のABC/アルツハイマー病)

DSM-Ⅳによるアルツハイマー病の診断基準
(1994年にアメリカ精神医学会が発表し、現在広く用いられている診断基準の一つ)
A. 多彩な認知障害の発現。 以下の2項目がある
(1)記憶障害(新しい情報を学習したり、以前に学習していた情報を想起する能力の障害)
(2)次の認知機能の障害が1つ以上ある
  a)失語(言語の障害)
  b)失行(運動機能は障害されていないのに,運動行為が障害される)
  c)失認(感覚機能が障害されていないのに、対象を認識または同定できない)
  d)実行機能(計画を立てる、組織化する、順序立てる、抽象化する)の障害
B. 基準A(1)およびA(2)の認知障害は、その各々が、社会的または職業的機能の著しい障害を引き起こし、病前の機能水準からの著しい低下を示す
C. 経過は、ゆるやかな発症と持続的な認知の低下により特徴づけられる
D 上記A(1)およびA(2)に示した認知機能の障害は以下のいずれによるものでもない

(1)記憶と認知に進行性の障害を引き起こす他の中枢神経疾患
  (例:脳血管障害、パーキンソン病、ハンチントン病、硬膜下血腫、
     正常圧水頭症、脳腫瘍)
(2)認知症を引き起こすことが知られている全身性疾患
  (例:甲状腺機能低下症、ビタミンBl2欠乏症,葉酸欠乏症、ニコチン酸欠乏症、
     高カルシウム血症、神経梅毒、HIV感染症)
(3)物質誘発性の疾患
E. 上記の障害は、意識障害(せん妄)の期間中だけに出現するものではない
F 障害は他の主要精神疾患(例:うつ病、統合失調症など)ではうまく説明されない

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NINCDS-ADRDAによるアルツハイマー病の診断基準
(1984年にMcKhannらにより報告され、研究分野では国際的に最もよく使われている診断基準)
I probable ADの診断基準には次の項目が含まれる
●痴呆が次の三つで確認されている:臨床的診察、知能テスト(ミニメンタルステートなど)、神経心理学的テスト
●認知機能のうち二つ以上が障害されている
●記銘と他の認知機能が進行性に悪化
●意識障害がない
●発症年齢は40~90歳のあいだで,65歳以上が多い
●認知症の原因となる全身疾患やAD以外の脳疾患がない
II  probable ADの診断は次の各項によって指示される
●言語・運動行為・認知機能の障害(失語・失行・失認)の進行性悪化
●日常生活動作の障害と行動パターンの変化
●類似疾患の家族歴がある(とくにADと病理診断されている場合)
●検査所見
 髄液:正常
 脳波:正常あるいは非特異的変化(徐波増加など)
 CT(MRI):経過追跡で脳萎縮が確認されている
IIl AD以外の原因の認知症を除外した後、probable ADの診断と矛盾しない他の臨床的特徴
●経過中に病期の進行が一定の所で止まることがある
●随伴症状として起こりうるもの
●抑うつ、不眠、失禁、妄想、錯覚、幻覚、言語、情緒・身体面での激しい典奮、性行動異常、体重減少
●特に進行した例では筋トーマスの亢進、ミオクローヌス、歩行障害など神経学的所見が見られる
●進行した時期の痙攣発作
●CT(MRI):年齢を考慮すると正常
lV  probable ADの診断が疑わしい、あるいは probable ADらしくない特徴
●突然の脳卒中様発症
●局所神経症状(片麻痺、感覚障害、視野障害、初期の協調運動障害など)
●発症早期の痙攣発作や歩行障害
V 疑いあるADの臨床診断
●認知症が存在し、かつ痴呆の原因となる他の神経疾患、精神疾患、全身疾患が否定されているが、発症様式や臨床経過はさまざまである場合
●認知症の原因となりうる二次的な全身疾患や脳疾患があった場合でも、元からあった認知症の原因とは考えられない場合
●研究的な検討の場合は,認知機能のうち障害領域が一つだけで、進行性であって、他に原因が見出されないときには「疑い」と診断すべきである
VI.確実なADの臨床診断
●臨床診断基準の「ほぽ確実」を満たし、かつ生検か剖検で得られた脳で病理組織学的に碓認された場合
VII.研究を目的とする場合、ADを次のようなサブタイプに分けるべきである
●家族性発症かどうか
●65歳以前の発症かどうか
●2l番染色体のトリソミーがあるかどうか
●パーキンソン病などの他の疾患を合併しているかどうか
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●アルツハイマー病のチェックリスト
1 エピソード記憶を中心に重度の記憶の障害がみられる
エピソード記憶とは、日常生活上の出来事や経験した事柄について「いつ、どこで、何をしたか」を忘れることです。日常生活では、「置き忘れがひどく常に捜し物をしている。伝言の内容を忘れたり、伝言があったこと自体を忘れる。買い物に行っても買う予定の物を忘れて、別の物を買ってくる」などの行動が見られます。
2 時間の見当識が障害される
「今日は何月何日か、今は何時か」がわからなくなることです。昼寝をした後、朝と勘違いしたり、日や月を間違うこともあります。
3 場所の見当識が障害される
知っている道で迷うことです。現在、自分がいる場所がわからなくなり、迷子になる場合もあります。
4 言語の障害がある
日常使用している品物や道具の名前を忘れ、「代名詞」の使用が多くなります。そのため、「言葉の数は多いものの、まとまりに欠けて、内容が理解しにくく」なります。進行すると、「ありがとうとう」のように文末を繰り返す語間代という現象がみられます。
5 失行がある
アナログ時計では時刻がわからなくなります。また、時計の絵が書けなくなります。少し進行した場合には、手指の名前がわからなかったり、左右が混乱します。衣服を逆にしたりボタンがはまらずに、着られなくなる場合もあります。
6 記憶障害は年単位でゆっくり進行する
少しずつ症状が進みます。通常、「夜間に一時的に悪化すること」や、「数日の間で明らかな悪化や改善の変化をすること」はありません。その際は意識障害が疑われます。
7 取り繕いや場あわせの反応をする
日常生活に支障が出てきても、「特に困らない、普通」などといい、取り繕って協力を求めません。また、日時の質問では、「忙しくて新聞を見なかった」「カレンダーを見てくれば良かった」、好きな食物の質問では、「何でも好き」などと、質問に答えられなくても、上手に相手に合わせた対応をとります。
8 作話がある
記憶を補うために、うその話しをします。故意ではなく、また内容が会話の途中で変化したり、矛盾しても気づかないようです。
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※3つ以上該当する場合、アルツハイマー病が疑われます。
   若年認知症ー本人家族が紡ぐ7つの物語ー(宮永和夫編集代表より)
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