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記憶のメカニズム・・・2

スパインの変化と記憶の性質
一夜づけで覚えた数学の公式はすぐに忘れてしまうが、小学生のころに覚えた九九はなかなか忘れない。この記憶の不思議な性質は、どうやって生じるのだろうか?
「脳も結局は細胞からできている。細胞としての性質を明らかにすれば、記憶の不思議な性質も説明できるのではないか」。東京大学の河西春郎教授はそのように考え、「スパイン」という樹状突起の出っぱりに注目して、研究を行っている。スパインとは、神経細胞のつなぎ目(シナプス)で、ほかの神経細胞からの信号(神経伝達物質)を受け取る構造のことである。
これまでに、同じことをくりかえし学習すると、同じスパインに何度も信号が送られ、スパインが大きくなることがわかっている。スパインが大きくなると、信号を効率的に受け取れるようになるという。この現象は、記憶が脳にたくわえられるしくみの一部だと考えられている。
スパインの大きさは学習による刺激でのみ変化すると思われていた。ところが、学習による刺激がなくても大きさが“自然に”変動していることが、河西教授らの研究で明らかになってきた。ラットの海馬の神経細胞を培養し、数日にわたって観察したところ、大きくなったり、小さくなったり、スパインの大きさは日々変動していたのだ。
河西教授は、このスパインの変動から、記憶や学習の不思議な性質の一部を説明できると考えている。「新しい記憶。つまり小さなスパインは、変動によってすぐに消滅してしまう可能性が高いです。知識を身につけるためには、くりかえし学習してスパインを大きくする必要があります。また、古い記憶は、すでにスパインがかなり大きくなっており、多少の変動くらいではなかなか消えないので、忘れにくいのだと考えられます」(河西教授)。
脳のさまざまな機能は、細胞の動きや形を理解することで、よりくわしく説明できるようになるかもしれない。
一つのスパインに、ある一つの記憶がおさめられているわけではない。記憶はあくまでも、神経細胞がつくる“ネットワーク”に保存されている。つながり方や信号の伝わり方こそが記憶なのである。
※Newton 2010.3より引用しています
※河西(Kasai)研究室.(東京大学大学院医学系研究科 疾患生命工学センター 構造生理学部門)

http://www.bm2.m.u-tokyo.ac.jp/typical/commentary2.html
(上記のhpで最新の河西教授の研究もわかります)

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