レビー小体型認知症の臨床診断/系統的な自律神経機能評価

レビー小体型認知症(DLB)では、起立性低血圧や排尿障害など自律神経症状を高率に認め、患者の日常生活に多大な影響を及ぼしている。本稿では、DLBの自律神経機能障害について、心血管系機能の評価法である体位変換試験、頸動脈洞マッサージ検査、Valsalva検査、心拍変動の報告を概観した。DLBではこれらの検査により交感神経系および副交感神経系の両者に障害が認められる。
次に最近われわれが検討している高炭酸換気応答検査について紹介した。DLBでは高炭酸換気応答が著しく障害され、血中二酸化炭素濃度が上昇しても、代償機転としての換気量の増加が生じない。したがって、肺炎や薬剤使用などによるさらなる呼吸機能の低下には十分注意が必要である。また、アルツハイマー型認知症をはじめとする他の変性疾患では高炭酸換気応答が正常反応を示すことから、本検査はDLBの診断ツールとしても有用である。


心血管系の機能評価法を用いた報告

1. 体位変換試験
体位変換検査には能動的に起立する起立試験と tilt ta-ble を用いて受動的に頭部を挙上させる Head-up tilt 試験がある。臥位から立位に体位変換すると、静脈還流と心拍出量の低下が生じ、頸動脈洞や大動脈弓の圧受容器の負荷減弱が生じる。この情報が延髄の反射中枢(孤束核)に到達する。その後、延髄の血管運動中枢、交感神経節などを経て交感神経節後繊維である血管運動神経の活動が促進し、神経末端からノルアドレナリンが放出され末梢血管が収縮する。また孤束核から迷走神経背側核を経由して副交感神経の抑制が生じ、心拍数の増加が生じる。この反射経路の障害によって起立性低血圧が生じる。DLBの患者のおよそ7割に起立性低血圧を認めた。このようにDLBでは高率に起立性低血圧が生じることは一致した見解である。DLBでは起立による心拍数の増加が障害されることを報告している。この心拍数の変化は副交感神経系の機能を反映することから、DLBに交感神経系と副交感神経系の両者の障害が存在することを示唆している。なお、彼らの検討では血管性認知症(vascu-lar dementia ; VD)の心拍数の変化は、DLBより強く障害されていた。起立性低血圧は失神や転倒の原因となり、ADLや予後に多大な影響を及ぼしている。

2. 頸動脈洞マッサージ検査
頸動脈洞過敏性(carotid sinus hypersensitivity ; CSH)も、失神や転倒の原因の1つである。本検査では、5秒間の頸動脈洞マッサージによって3秒以上のRR間隔の延長、あるいは50mmHgなど著明な収縮期血圧の低下を示す場合、CSHと診断される。頸動脈洞の圧迫により圧受容体からの負荷増強の情報が孤束核に達し、その後心臓迷走神経と血管運動神経を介して脈拍の減少と血圧低下が生じる。高齢者ではCSHの頻度が増すが、DLBでは特に高頻度に認められる。DLB例でCSHを認めた例は、頭部MRI上、大脳白質の虚血変化が強かったという。DLBでは、CSHも起立性低血圧も高頻度にみられるため、繰り返し生じる血圧の低下が大脳白質の血管障害をきたし、虚血性変化を誘発したと考えられる。

3. Valsalva検査
Valsalva検査は、胸腔内圧を上昇させ、その後に生じる一連の血圧の変化をモニターする検査で、40mmHgの圧を15秒維持するように息を吹き込む方法がしばしば用いられる。DLBにおけるValsalva検査の結果は、やはり交感神経系、副交感神経系の両者の障害を示している。またAllanらはValsalva検査による心拍数の変化(Valsalva ratio)を計測し、DLBでは対照と比較して心拍数の変化が有意に低下することを報告した。これも副交感神経系の障害を示唆する所見である。

4. 心拍変動
心拍(RR)間隔は呼吸などの影響を受け常にゆらいでおり、これを心拍変動という。心拍変動にはいくつかの指標があり、時間領域指標と周波数領域指標に大別される。時間領域指標には、SDNN、SDANN、rMSSD、pNN50(%)などの指標があり、周波数領域指標にはHF(high frequency, 0.15Hz以上)、LF(low frequency, 0.04〜0.15Hz)、LF/HFなどがある。このうち、HFは心臓迷走神経による副交感神経系の活動の、LFは交感神経系の心臓・血管神経および心臓迷走神経両者の活動の、LF/HFは交感神経系と副交感神経系のバランス、あるいは交感神経活動の指標と考えられている。心拍変動の低下は、心不全、冠動脈疾患による死亡、突然死などのリスクを高める可能性が報告されている。自験例で24時間ホルター心電図の結果から心拍変動を測定したところ、やはりDLBのHF値とLF値は、ADや対照群と比較して著明に低く、DLBでは、心臓迷走神経および交感神経節後繊維の両者に障害が示唆された。DLBを対象とした心血管系に関する一連の自律神経検査では、いずれも交感神経系、副交感神経系の両者に著明な障害が描出される。

5. 呼吸調節機能
血中酸素濃度の低下は頸動脈体の化学受容器で感知し、求心性の情報は延髄呼吸中枢に達する。その結果、換気量の増加が生じる。一方、血中二酸化炭素濃度の変化は、主に延髄の中枢化学受容野が感知すると考えられている。

レビー小体型認知症における高炭酸換気応答

DLB全例で高炭酸換気応答は異常低反応を示した。またAD患者や健常者の高炭酸換気応答を検討したところ、全例が正常反応を示した(Mizu-kamiら投稿中)。
高炭酸換気応答検査の結果は、DLBでは血液中の二酸化炭素の増加に対して、正常では生じるはずの換気量の増加が出現しないことを示唆している。したがってDLB患者に対しては、呼吸器系感染症の合併や呼吸抑制をきたす薬剤の投与など、さらなる呼吸機能の悪化に十分注意する必要がある。さらにDLBでは心血管系の自律神経機能も著明に障害されているため、身体合併症に対する予備能力がきわめて低下していると考えられる。なお、AD以外にも、文献的にはPDや多系統萎縮症も高炭酸換気応答が正常と報告されているので、高炭酸換気応答検査は、DLBをAD、PD、多系統伊縮症から鑑別する診断ツールとしても有用と考えられる。

DLBに対する自律神経機能評価を概観した。自律神経障害は、ADLや予後に直接影響するため、その評価は臨床的にきわめて重要である。DLBではこれまで報告されている心血管系の障害のみならず、呼吸調節系の障害も存在することから、身体的予備能力の低下をきたしており、合併症の併発には十分な注意が必要である。DBLにとって自律神経障害は、認知機能障害、精神行動症状、錐体外路症状と並ぶ重要な症状であり、自律神経障害に配慮した治療薬の選択やケアが大切である。
  ※Cognition and Dementia Vol.7 No.4 2008.10 より引用
    ■特集 レビー小体型認知症の臨床診断
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危険因子/遺伝

■家族性アルツハイマー病と弧発性アルツハイマー病
家族性とは1家系の中に2人以上の発症が見られる場合で、通常は2世代以上にわたって発症が確認される。このような家族歴のないものが弧発性です。
家族性アルツハイマー病は遺伝性アルツハイマー病とも表現されます。

■早発性アルツハイマー病と遅発性アルツハイマー病
アルツハイマー病は発症年齢により分類され,60歳ないし65歳以前に発症するタイプを早発性アルツハイマー病、それより以降に発症するタイプを遅発性アルツハイマー病と言います。
遺伝子変異が原因となって高い浸透率を示すアルツハイマー病はすべて早発性です。
一方、遅発性アルツハイマー病の危険因子としてアポリポタンパクE(ApoE)遺伝子があるが、ApoEには発症を促進する作用の他に発症年齢を若年化する作用があることが明らかになっています。 

●早発性アルツハイマー病の原因遺伝子
アルツハイマー病では3つの遺伝子に変異が発見されています。
1. アミロイド前駆体タンパク(APP)遺伝子(第21染色体)
  発症年齢 50歳代 
2. プレセニリン1(PS1)遺伝子(第14染色体)
  発症年齢 40~50歳代 家族性ADの比率が一番高い
3. プレセニリン2(PS2)遺伝子(第1染色体)
  発症年齢 50~60歳代
※それぞれの遺伝子の特徴は詳しくwebで調べることができます。

●遅発性アルツハイマー病の危険因子
1. アポリポタンパクE(ApoE)遺伝子
アポリポタンパクE遺伝子には、ε2、ε3、ε4と呼ばれる3つの正常な変異型があります。ε2遺伝子を持っている人は、アルツハイマー病にはならないのですが、ε4対立遺伝子をもっている人はアルツハイマー病になるリスクが高くなります。
2. アポリポタンパクE(ApoE)ε4以外の危険因子
100を越える遺伝子がアルツハイマー病の発症にかかわる遺伝子の候補とされています。
 「新しい診断と治療のABC-22/アルツハイマー病」より引用

前頭側頭葉変性症・1 基本

ドイツの精神医学者であるアーノルド・ピック氏が、1982年に言語障害、記憶障害と意欲低下の臨床症状を呈し、
剖検下肉眼的に左側頭葉の限局性萎縮を認めた71歳の男性を報告したことに始まります。

現在、前頭側頭型認知症、意味記憶障害型認知症、進行性失語型認知症の3つを総称して前頭側頭葉変性症とよぶことになっています。ピック病というのは、この3つの認知症の原因となるもっとも多い疾患です。
FTDの頻度はADの約1/3といわれ、ADに比べて発症年齢が若く、女性より男性が多い。
FTDの初期においては、記憶障害が余り目立たず、主に人格変化がみられます。そのため、しばしば統合失調症や躁うつ病、更年期障害などと間違われたりもします。また、言葉の意味がわからなくなったりすることで、見かけ上は記憶障害があるようにみえるため、ADと間違われることもあります。FTDでは初期から病識がないため、受診や通院などが困難になる場合があります。

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1. 前頭側頭型認知症[前頭葉優位](FTD)
  A 臨床類型
   1)脱抑制型
   2)無欲型
   3)常同型
  B 病理類型
   1)ピック型
   2)前頭葉変性型
   3)運動ニューロン疾患(MND)型
2. 意味記憶障害型認知症[側頭葉優位](SD)
3. 進行性失語型認知症[前頭・側頭・(頭頂葉)](PA)

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前頭側頭型認知症[初期~中期]のチェックリスト
1. 状況に合わない行動
場所や状況に不適切と思われる悪ふざけや配慮を欠いた行動をする。
また、周囲の人に対して無遠慮な行為や身勝手な行為をする。
2. 意欲減退 
引きこもり(閉じこもり)、何もしない(不活発)などの状態が持続し、改善しない。
思い当たる原因は特になく、本人の葛藤もみられない。
3. 無関心
自己の衛生や整容に無関心となり、不潔になる。
また、周囲の出来事にも無関心になる。
4. 逸脱行動[脱抑制]
万引きや痴漢などの軽犯罪を犯す。しかし、自分が行ったことの意味を理解できず、反省したり説明したり説明することができないとともに、同じことを繰り返す。
5. 時刻表的行動
日常生活の様々な行為(食事や入浴、散歩など)を、時刻表のように毎日決まった時間に行う。この際、止めたり、待たせたりすると怒る。
6. 食べ物へのこだわり
毎日同じもの(特に甘いもの)しか食べない。
制限なく食べる場合がある。
7. 常同言語[滞続言語]、反響言語
同じ言葉を際限なく繰り返す。また、他人が言った言葉をオウム返しする。他人が制止しても一時的にしか止まらない。
8. 嗜好の変化
食べ物の嗜好が大きく変わる。(薄味を好んでいたのが、突然、甘味・酸味・塩分・油を好むなど)。
アルコールやタバコなど、以前の量を超えて毎日大量に摂取する。
9. 発語障害[寡言、無言]、語義失語
無口になったり、語彙(ごい)が少なくなる。
ハサミやメガネなどを見せて尋ねても、名前や使い方がわからない。
10. 初めは記憶や見当識は保持
最近あった身の回りの出来事などに対する記憶は保たれ、日時も間違えない。
外出しても道に迷わない。
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※3個以上該当する場合、前頭側頭型認知症が疑われます。
また、4,5,7,9,の1項目でも該当すると前頭側頭型認知症の可能性があります。

若年認知症の臨床、りんくる2008.20他より宮永氏の文章より引用しています。
(宮永和夫/南魚沼市立ゆきぐに大和病院院長、若年認知症サポートセンター理事長)

レビー小体型認知症の診断基準

レビー小体は、ドイツのユダヤ人神経学者レビーが1912年にパーキンソン病の脳で発見し、1919年にフランスのトレチイアコフが命名しました。レビー小体病の名称は1980年に小阪氏が提唱した「レビー小体病」や1984年に提唱した「びまん性レビー小体病」を基礎としています。1995年に国際ワークショップが開催されレビー小体型認知症にまとめられた。以降1998年、2003年、2006年と国際ワークショップが開催され、臨床と病理の新診断基準が順次提案されています。

●なぜレビー小体型認知症の臨床診断が重要か?
DLBは早期から最もBPSDを伴いやすい認知症であり、そのために患者やその介護者は苦しんでおり、そのQOLも障害されている。したがって、DLBを早期に診断して対処することによりBPSDを改善させたり、BPSDの発現を抑えることも可能であり、それによって患者およびその介護者のQOLを高めることが可能となる。
特にDLBでは幻視を中心とする幻覚やそれに基づく妄想が起こりやすく、しかもそれらは認知機能の障害がまだ軽いうちに起こることが多く、DLBが誤診されやすい。
DLBでは抗精神病薬に対する過敏性があり、このことを知らないと取り返しのつかない状態に陥ることも臨床の現場でみることが少なくない。この際でも、従来の抗うつ薬を多量に使用されたり、抗精神病薬が安易に使用されたりすると、歩行ができなくなったり、体がカチカチになってしまったりすることがある。
神経内科医に多いが、PDの経過中に幻覚が出現すると、それを単なるレボドーパなどの薬剤性のものと考えて、レボドーパなどが減量され、かえってパーキンソン症状が悪化し、幻覚もよくならないで筆者らのもとを訪ねることが少なくない。


●レビー小体型認知症の原因
DLBの原因は、今のところ不明です。家族性の遺伝子異常が見つかっている例もごく少数ありますが、大部分は散発性(家系や遺伝によらないもの)であり、誰でも起こりうる病気です。
DLBの脳では、中枢神経系(特に大脳皮質、扁桃体、マイネルト基底核、黒質、青斑核、縫線核、迷走神経背側核など)に多数のレビー小体の出現がみられます。このレビー小体が大脳皮質まで広がると、認知症になります。パーキンソン病では、脳幹を中心に現れます。

●レビー小体病の分類
1. 脳幹型(パーキンソン型)
2. 辺縁型
3. 新皮質型(びまん性レビー小体病)

■通常型・・多少ともアルツハイマー病変がある
初老期や老年期に発病することが多く、認知機能の障害から始まり多くの症例ではパーキンソン症状が加わるが、約30%の症例ではパーキンソン症状が最後まで認められない。
■純粋型・・ほとんどアルツハイマー病変がない
65歳以下の若年発症が多く、パーキンソン症状が初発症状で、のちに認知症を伴うのが普通である。
4. 大脳型
(2008.10 Cognition and Dementia 小阪憲司氏より)

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★レビー小体型認知症(DLB)の改訂版臨床診断基準(2005年)
1. 必須症状(possibleまたはprobableの診断に必須)
ア)正常な社会的または職業的機能に障害をきたす程度の進行性認知機能障害と定義される認知症がある。
イ)著名な、あるいは遷延性の記憶障害は病初期には必ずしも生じないが、進行すると通常認められる。
ウ)注意、実行機能、視空間機能検査の障害が特に目立つことがある

2. 中核症状(probableは2つが、possibleは1つが必要)
ア)注意や覚醒レベルの著名な変化を伴う認知機能の変動
イ)現実的で具体的な内容の繰り返される幻視体験
ウ)突発性のパーキンソニズム
 1. 固縮・寡動
 2. 振戦

3. 示唆症状(1つ以上の中核症状に加え、以下の症状が1つ以上あればprobable、中核症状がなく以下の症状が1つ以上あればpossibleとする)
ア)REM睡眠行動障害
イ)重度の抗精神病薬への過敏性
ウ)大脳基底核におけるドーパミントランスポーター取り込み低下
(SPECTまたはPET検査)

4. 支持症状
ア)繰り返す転倒と失神
イ)一過性の意識障害
ウ)重度の自律神経症状(起立性低血圧、尿失禁)
エ)幻視以外の幻覚
オ)系統的な妄想
カ)抑うつ状態
キ)中側頭葉領域の(相対的)保持(CTもしくはMRI検査)
ク)後頭葉領域での灌流低下(SPECTまたはPET検査)
ケ)MIBG心筋シンチグラフィーでの取り込み低下
コ)側頭葉の一過性鋭波を伴う顕著な徐波化(脳波検査)

5. 可能性の少ないもの
ア)局所性神経徴候や画像で裏付けられる脳卒中の存在
イ)臨床像を証明しうる身体疾患や他の脳病変の証拠の存在
ウ)重度の認知症の段階でパーキンソニズムのみが初めて出現した場合

6. 症状の時間的連続性
DLBの診断は、認知症がパーキンソニズムの前か同時に出現したときになされなければならない。
すでに確立したパーキンソン病が存在する状況で生じた認知症については、認知症を伴うパーキンソン病(PDD)の用語を用いなければならない。レビー小体病のなどの総称的な用語が有用な場合も多い。DLBとPDDの区別を必要とする研究においては、従来の認知症とパーキンソニズムの間の1年ルールが引き続き推奨される。他の時間間隔を用いても、データの蓄積や研究間の比較を妨げるだけであろう。臨床病理的研究や臨床試験などを含む他の研究においては、この2つの臨床型を合わせてレビー小体病やαシヌクレイノパチーなどの統一カテゴリーとして考えることも可能である。
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※引用資料
●2008.10 Cognition and Dementia
特集 レビー小体型認知症の臨床診断
●神経心理学コレクション
トーク認知症/小阪憲司・田邉敬貴
●りんくる 2008 vol.20
特集/レビー小体型認知症と前頭側型認知症
●若年認知症の臨床 宮永和夫

観察式認知機能評価スケール

アルツハイマー病の機能評価ステージ(FAST
日常の行動の観察から重症度を評価するスケールで認知症の病期を7段階に分類している。重症度の指標となる症状が記載されており、比較的判断しやすい有用なスケールです。
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※アルツハイマー病によって生じる機能の喪失は特定のパターンにしたがって起こり、後から獲得された能力ほど早く失われていきます。例えば、まだ失禁がないのに歩けなくなっている認知症患者がいるとすれば、それはおそらくアルツハイマー病ではなく、何らかの合併症の結果であるか、他の型の認知症であるか可能性があります。自分で衣服の着脱ができるアルツハイマー病患者に、尿や便失禁があるとすれば、他の疾患によって失禁が起こっていると考えて調べるべきである。それは、その患者は足が痛いためにトイレに間に合わないか、利尿剤を投与されているのかもしれないし、また、車椅子に固定されているためかもしれない。膀胱炎や糖尿病をもっているかもしれない。まだ、理解可能な話しができて、正しい文章をつくることができるアルツハイマー病患者は歩くことができるはずである。そうでない場合には、腰や膝の関節痛や足の痛みなどのアルツハイマー病以外の原因があると考えられる。また、抗精神病薬の過剰投与のためにパーキンソン症状を示し、筋固縮のために動きにくいのかもしれない。あるいはまた、精神安定剤のために睡気があるのかもしれない。水分や電解質不足になると、全身的に衰弱することもある。健康な人に比べてアルツハイマー病患者は急激に不穏な錯乱状態になったり、急に眠り込んだりするせん妄を容易に起こしやすい。膀胱炎や感冒、脱水症状はときとしてせん妄状態をきたしやすい。
     (アルツハイマー病ー患者の世界ーより)

アルツハイマー病の診断基準

アルツハイマー病では、その病状の進行に伴って、特徴的な記憶障害や視空間認知・構成の障害、見当識障害、言語障害が出現する。妄想、抑うつ、徘徊、無為・無関心などの精神症状や行動の障害もみられる。診断基準にはDSM-ⅣやNINCDS-ADRDAなどがあるが、除外診断の側面が大きく、積極的な診断基準の作成が望まれる。
(新しい診断と治療のABC/アルツハイマー病)

DSM-Ⅳによるアルツハイマー病の診断基準
(1994年にアメリカ精神医学会が発表し、現在広く用いられている診断基準の一つ)
A. 多彩な認知障害の発現。 以下の2項目がある
(1)記憶障害(新しい情報を学習したり、以前に学習していた情報を想起する能力の障害)
(2)次の認知機能の障害が1つ以上ある
  a)失語(言語の障害)
  b)失行(運動機能は障害されていないのに,運動行為が障害される)
  c)失認(感覚機能が障害されていないのに、対象を認識または同定できない)
  d)実行機能(計画を立てる、組織化する、順序立てる、抽象化する)の障害
B. 基準A(1)およびA(2)の認知障害は、その各々が、社会的または職業的機能の著しい障害を引き起こし、病前の機能水準からの著しい低下を示す
C. 経過は、ゆるやかな発症と持続的な認知の低下により特徴づけられる
D 上記A(1)およびA(2)に示した認知機能の障害は以下のいずれによるものでもない

(1)記憶と認知に進行性の障害を引き起こす他の中枢神経疾患
  (例:脳血管障害、パーキンソン病、ハンチントン病、硬膜下血腫、
     正常圧水頭症、脳腫瘍)
(2)認知症を引き起こすことが知られている全身性疾患
  (例:甲状腺機能低下症、ビタミンBl2欠乏症,葉酸欠乏症、ニコチン酸欠乏症、
     高カルシウム血症、神経梅毒、HIV感染症)
(3)物質誘発性の疾患
E. 上記の障害は、意識障害(せん妄)の期間中だけに出現するものではない
F 障害は他の主要精神疾患(例:うつ病、統合失調症など)ではうまく説明されない

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NINCDS-ADRDAによるアルツハイマー病の診断基準
(1984年にMcKhannらにより報告され、研究分野では国際的に最もよく使われている診断基準)
I probable ADの診断基準には次の項目が含まれる
●痴呆が次の三つで確認されている:臨床的診察、知能テスト(ミニメンタルステートなど)、神経心理学的テスト
●認知機能のうち二つ以上が障害されている
●記銘と他の認知機能が進行性に悪化
●意識障害がない
●発症年齢は40~90歳のあいだで,65歳以上が多い
●認知症の原因となる全身疾患やAD以外の脳疾患がない
II  probable ADの診断は次の各項によって指示される
●言語・運動行為・認知機能の障害(失語・失行・失認)の進行性悪化
●日常生活動作の障害と行動パターンの変化
●類似疾患の家族歴がある(とくにADと病理診断されている場合)
●検査所見
 髄液:正常
 脳波:正常あるいは非特異的変化(徐波増加など)
 CT(MRI):経過追跡で脳萎縮が確認されている
IIl AD以外の原因の認知症を除外した後、probable ADの診断と矛盾しない他の臨床的特徴
●経過中に病期の進行が一定の所で止まることがある
●随伴症状として起こりうるもの
●抑うつ、不眠、失禁、妄想、錯覚、幻覚、言語、情緒・身体面での激しい典奮、性行動異常、体重減少
●特に進行した例では筋トーマスの亢進、ミオクローヌス、歩行障害など神経学的所見が見られる
●進行した時期の痙攣発作
●CT(MRI):年齢を考慮すると正常
lV  probable ADの診断が疑わしい、あるいは probable ADらしくない特徴
●突然の脳卒中様発症
●局所神経症状(片麻痺、感覚障害、視野障害、初期の協調運動障害など)
●発症早期の痙攣発作や歩行障害
V 疑いあるADの臨床診断
●認知症が存在し、かつ痴呆の原因となる他の神経疾患、精神疾患、全身疾患が否定されているが、発症様式や臨床経過はさまざまである場合
●認知症の原因となりうる二次的な全身疾患や脳疾患があった場合でも、元からあった認知症の原因とは考えられない場合
●研究的な検討の場合は,認知機能のうち障害領域が一つだけで、進行性であって、他に原因が見出されないときには「疑い」と診断すべきである
VI.確実なADの臨床診断
●臨床診断基準の「ほぽ確実」を満たし、かつ生検か剖検で得られた脳で病理組織学的に碓認された場合
VII.研究を目的とする場合、ADを次のようなサブタイプに分けるべきである
●家族性発症かどうか
●65歳以前の発症かどうか
●2l番染色体のトリソミーがあるかどうか
●パーキンソン病などの他の疾患を合併しているかどうか
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●アルツハイマー病のチェックリスト
1 エピソード記憶を中心に重度の記憶の障害がみられる
エピソード記憶とは、日常生活上の出来事や経験した事柄について「いつ、どこで、何をしたか」を忘れることです。日常生活では、「置き忘れがひどく常に捜し物をしている。伝言の内容を忘れたり、伝言があったこと自体を忘れる。買い物に行っても買う予定の物を忘れて、別の物を買ってくる」などの行動が見られます。
2 時間の見当識が障害される
「今日は何月何日か、今は何時か」がわからなくなることです。昼寝をした後、朝と勘違いしたり、日や月を間違うこともあります。
3 場所の見当識が障害される
知っている道で迷うことです。現在、自分がいる場所がわからなくなり、迷子になる場合もあります。
4 言語の障害がある
日常使用している品物や道具の名前を忘れ、「代名詞」の使用が多くなります。そのため、「言葉の数は多いものの、まとまりに欠けて、内容が理解しにくく」なります。進行すると、「ありがとうとう」のように文末を繰り返す語間代という現象がみられます。
5 失行がある
アナログ時計では時刻がわからなくなります。また、時計の絵が書けなくなります。少し進行した場合には、手指の名前がわからなかったり、左右が混乱します。衣服を逆にしたりボタンがはまらずに、着られなくなる場合もあります。
6 記憶障害は年単位でゆっくり進行する
少しずつ症状が進みます。通常、「夜間に一時的に悪化すること」や、「数日の間で明らかな悪化や改善の変化をすること」はありません。その際は意識障害が疑われます。
7 取り繕いや場あわせの反応をする
日常生活に支障が出てきても、「特に困らない、普通」などといい、取り繕って協力を求めません。また、日時の質問では、「忙しくて新聞を見なかった」「カレンダーを見てくれば良かった」、好きな食物の質問では、「何でも好き」などと、質問に答えられなくても、上手に相手に合わせた対応をとります。
8 作話がある
記憶を補うために、うその話しをします。故意ではなく、また内容が会話の途中で変化したり、矛盾しても気づかないようです。
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※3つ以上該当する場合、アルツハイマー病が疑われます。
   若年認知症ー本人家族が紡ぐ7つの物語ー(宮永和夫編集代表より)